シカール
シカール著のDu fait de cuisine を冒頭からみてゆきましょう。
Du fait de cuisine by Maistre Chiquart
( Monseigneur Ayme, first duke of Savoy に捧げる)
神聖にしてイエスキリストの母であられる聖母マリア様のご加護が我が君主様にあられんことを。
最初に神にこの誉れ高い宴を催すお許しを請わねばなりません。
王、女王、公爵、女公、伯爵、女伯、王子、女王、公爵、女侯、男爵、女男爵、地方領主、そして多数の貴族方、これらの方々に対する格式ある料理とこの饗宴の名に恥じない品位ある宴にお出しする料理の数々を以下に述べることとする。
中略
よく肥えた牛100匹、羊120匹、そして又よく肥えた120匹の豚を饗宴の期間中に、そして宴の各日に子豚100匹これはローストするか他の料理に使う、そしてよく肥えた豚の塩漬けを60頭、これはラーディングに使うかスープにする。
屠畜者は知恵が働きよく頭の回る者であること。そうであれば、宴が予定よりも伸びても何が急に入り用なのか仮に余分にいる物は何であるのか(これに対応出来るようでなければならない)家畜が多いからと言ってむやみに処分してはならない。
宴の各日には羊200匹、仔山羊200匹、仔牛100匹、家禽2,000羽をそろえておかなければいけない。従って(あなたがかかえている)家禽商は機転が利く知恵のある者でなければいけない。家禽商はそのために、馬を40頭ほど抱えており、いろいろな場所から鹿、野ウサギ、アナウサギ、ヤマウズラ、キジ、(手にはいるだけの)小さな鳥,(手に入る)水鳥,ハト、鶴、サギ、全ての野生の鳥、これらをあらゆるところから、宴の2ヶ月~6週間前までに注意を喚起し、手にいれて、少なくとも宴の3-4日前に注文した肉が然るべき方法で処分された状態のものを手に入れておかねばならない。
宴の各日には卵を6,000個用意しておくこと。また宴にはスパイスを2荷。主な物として、ホワイトジンジャー、メカジンジャー、シナモン、グレインズオブパラダイス、コショウを用意しておくこと。
その他のスパイスとして、ナツメグ6ポンド、クローヴ6ポンド、メイス6ポンド、ガリンゲイル6ポンド、砂糖30袋、サフラン25ポンド、アーモンド2チャージ、米1チャージ、amydon30ポンド、レーズンの糖菓を12篭、イチジクの糖菓を12篭、プルーンの糖菓を8篭、デーツ100kg、松の実40ポンド、ターンソウル18ポンド、アルカネット18ポンド、金箔18ポンド、樟脳1ポンド、100エル(45インチ×100)の長さの薄布(ストレイナーとして使う)。これらの物は台所使用に限られた物でなくてはならない。
又、この宴を催す君主様にご満足していただけるように迅速に手が打てるように(用意しておかなければならない)宴に必要な前述のスパイスは各々別の皮袋の中に入れておくこと。
叱責やしくじりのない,よりよい準備のためにハウスステュワード、キッチンマスター、クックマスター達は宴の3-4ヶ月前に順番に集まって料理をするスペースが十分にあるか確認をする。
この作業スペースが十分に大きくよい状態であると大きなワーキングサイドボードが置け、キッチンマスターが料理を渡したり、皿を受け取ったりするところとサーヴィングサイドボードの間が(使いやすい様に配置出来るのです。)そしてそこには大きなよごれのない大きな肉を料理するのに必要な釜を。そしてポタージュやその他の料理に使う中くらいの釜をたくさん、そして魚やその他の必要な料理をするのに大きなハンギングパンを、たくさんの量のスープやその他の料理に使う普通のポットを、又かなり大きいモルタルを12個;ソースを作るスペースがあるかどうか確認して、又大きなフライパンを12,大きな貯蔵樽を12,小さな貯蔵樽を50、60のハンドル付きボール(cornues)、100本の木製スプーン、大小各25のslotted spoonsboth、フックを6つ、20の鉄製シャベル、回転する鉄製のスピットのついた肉焼き機を20,木製のスピットは腐って肉を駄目にすることがあるので絶対に信用してはいけない。120の鉄製スピットで丈夫な13フィートの長さの物。
他に3ダースの13フィートの長さのそれほど厚くなくて、鳥をローストし、小さな仔豚や川鳥をローストする(のに必要なスピット)を備えておくべきである。又、48の小さなスピットをendoring や焼串として使う。
又、酢を2樽;赤白ワインを1樽ずつ、各110ガロン(8sommes)のもの、よい樽に入ったヴェルジュを275ガロン(12sommes)、油を137 1/2ガロン(10sommes)。
そしてよく乾いた薪を荷馬車で1,000台分、大きな店舗一軒分の石炭、これらは十分でなくなった場合に補充出来る様確認をしておく。職人が怠けることがないように不足する物がなにもないようにキッチンマスタアーには有り余る程の手持ちの金を渡しておくこと。塩、ポット、野菜や他の必要なものが手にはいるようにしておくこと。私にはそういうことは起きてはいないけれども。
又、上手に手際よく提供し、素早くやってのけられるよう多数の金、銀、ピューター、木製のコップを4,000人分以上用意しておく。最初のコースで提供する場合、次のコースといくつかの数を用意しておく(そうすると)中間の時間で先のコースで使ったコップを洗ってきれいにすることが出来る。
又、このような宴で、ある非常に身分の高い高貴な方、由緒があり立派な領主とその淑女の方々で肉を召し上がらない方がおられる。そんな時には魚を、海や川の生又は塩漬けのものを、召し上がられる方法でお出しせねばならない。
又、海の魚の中ではsea-bream が一番である。リストアップすれば最初がsea-breamでconger-eel,grey mullet, hake, sole ,red mullet, dorade, plaice,turbot, sea-crayfish,crayfish,tuna ,sturgeon,salmon,herings,sardines,sea-urchin,mussels, eels, boops,ray,cuttke-fish,arany marine, anchovies,ells,、生と塩漬けの両方があげられる。
淡水魚について言えば、big trout,big ells, lampreys, filleted char, filletes of big pike ,filets of big carp, big perch,ferre’s,palle’s,graylings ,burbot, crayfish,そして他の魚である。
又、前にも述べた領主様とその奥方様の中には専属のマスタークックを伴っており、その者にある料理を準備させ、作らせるのです。その方々が素早く動けるようにマスタークックは要求に応じて十分にすぐに必要な品物を大量に提供出来るようにしておかねばならない。彼は好みに合う料理を御領主様とその奥方様にお出しせねばならないのだから。
又、最上のチーズを12,000kg、良質な白布を4,500インチ、サイトボード、魚、肉、ローストしたものをカバーするのに使うのです。そして、60×45インチのリネンの布でゼリーの色を出すのに使うのです。白の幅広い布でhyppocrasの色の様な12色の色を作るのです。
又、2個の大きな両手ナイフで牛を解体し、ドレッシング用にドレッシングナイフを1ダース、それにポタージュとスタッフィングを作るのに2ダースのナイフ、これは鳥と魚を細かく刻んだりして料理の準備をするときに使うのです。
更に、カッテイングボードとサイドボードを洗うのにタワシを6つ。生の肉と料理した肉をcasksに運ぶのに使用するバスケットを100個。サイドボードから運んで行ったり来たりするときに、石炭を運んだり、ローストを運んだり、その場に合わせて、また、カップを集めたり運んだりするに使うのです。
又、宴が仮に冬である場合には、台所に各夜60フィートとトーチを、20ポンドのワックスキャンドルを、60ポンドの獣脂ロウソクを屠殺場所、ペイストリーコックの場所、魚をさばく場所など、台所仕事をするところに必要である。
又、ペイストリを作る場所は大きくてしっかりとした作りで大きくて汚れのないオーブンを台所の近くに設置すべきである。肉と魚のペイストリにタルト、フラン、talmoses,ratons その他の料理に必要である。
又、最良の小麦をsommes(約412ガロン)用意しておくべきである。仮に宴が長引いても良いように気を付けるべきである。
又、三位一体であり、神聖なる神々の御慈悲により広く善なる行為を成し遂げる喜びに誓って、我々は宴を壮大にうまくきれいに成し遂げる準備をせねばならない。その為には、マスタークックとその料理人達はこの宴のために料理とアントルメを作らねばならない。上で述べた料理人とその使用人達が配置されていないことになれば、マスタークックは呼び出し人をその場所に送り、そこに人を配置しこの宴が崇高に行わなければならない。次ぎに、マスターとその職人がそろったら、マスタークックはそこにとどまり肉料理と魚料理を作る者を指示して各料理が計画したとおりに作られるよう、魚に付ける色は肉の色に似せて色つけするようによく指示せねばならない。
さて、最初に提供する大きな肉料理は、牛肉とマトンであり、牛肉はきれいで大きなRoyal piece にマトンを切り分ける者はくず肉を除いては何も残さずに切って、羊の長さに肉を切り分けなければならない。上で述べた牛肉とマトンの切り分けた肉片をサーヴするには大きな金の平皿にそのほかの物はのせずに(肉だけを)出すこと。
また、別の大きい平皿には(季節によっては)塩漬け肉をサーヴし、冬などは豚の背骨付の肉、andoiulle sausageと塩漬豚のチョップをのせる。
そしてこの最初のソースにはgreen porrayをサーヴして、マスタード以外のソースは必要ではない。これと一緒にシャポンの上にwhite bruetをかけて、いっしょに出す。肉にも同じものをかけてサーヴすべきである。
饗宴では料理とアントルメが重要な位置を占めていることが判ります。この宴でのアントルメのひとつを以下にお示ししておきましょう。上の文章からシカールが料理人として優秀だったことはよくお分かりいただけたと思うのですが、下のレシピからは彼の給仕長としての秀逸なる才能をご理解いただけるはずです。
10. entremet-castle
尊大なるアントルメ-城-この基礎となるものはかなり大きな担いかごでそのベースが作られている。4人で担える物で四隅には塔があり、各塔は要塞化し、跳ねだし座間がある。各塔にはこの要塞を守るクロスボウを構えた人と弓の射手を配置する。そして、各塔には明かりをともすろうそくと油のトーチが付いており、彼らはあらゆる種類の花と果物の枝を手に持ち、そしてその枝にはいろいろな鳥が付いている。各塔の足許には鎧をまとい炎を吐き出す熊の頭や、大きなカワカマスを“3つの方法で”料理したものを置いておく。-尾の部分はフライにして、中央の部分は煮て、頭はグリルでローストしたもの-これを別の塔の火を噴く獣の向かい側に置いておく。カワカマスはソースと一緒に食べるのでこれには注意を払うべきである。そのソースはオレンジをフライし、グリーンガーリックソースで煮たものである。このグリーンソースは酸っぱい味で、酢を少量入れて作る。ローストした(部分は)ギシギシで作ったグリーンヴェルジュといっしょに食べる。
別の塔の脚部にはendoredした炎を噴く仔豚を置き、その向かい側には皮を剥いて火を通し再び羽根を被せた白鳥を置く。これも口から火を噴く(ようにしておく)。
4つの塔の中央の脚部には愛の泉を作る。ローズウオーターときれいなワインが吹き出して流れのある泉を作る。この泉は鳩と全ての空を飛ぶ鳥たちといっしょになっている。そして、城の一番上には王旗やバナーを付け、泉のそばには皮を剥いて料理し、再び羽根を被せたクジャクを置いておく。
このクジャクの作り方は、私、Chiquartが既に述べたごとく、芸術とでも言うべきクジャク、それを作るマスターにこの方法をお教えしたく思います。これは領主様に対する尊厳と礼をもってお教えするのです。
大きな肥えたガチョウを用意しこれに串をうまく刺し、きれいにうまくローストする。クジャクの羽を着せてそのクジャクをセットするべき場所に置く。愛の泉の隣に羽根を広げた格好で尾を広げて、首は高く真っ直ぐに立てておく、あたかもそれが生きているように、首の中に木の棒を入れて首を真っ直ぐにしておく。そのためこれを料理する者はクジャクの皮を剥いではならない。金串をガチョウに刺し羽根をまとめて束ねる場所であるクジャクの臀部の皮を取ってガチョウの上にのせる。金串をガチョウに上手に打って、まるでクジャクが生きているようにその尾羽根を広げておく。
そして、下段の屋根の上にはニワトリの皮を取って料理した後、又羽根を被せたものとハリネズミをのせておく。それに肉で作ったリンゴや肉で作ったスペイン壺。型で作った作り物として、野ウサギ,brachets,シカ、ボア、ドルフィン、ザリガニ、ヤマウズラ、角のある猟師、型で抜いたエンドウ豆、肉を型に入れて作った空豆を置いておく。
その城のカーテンは周りを全て取り巻いて大きく地面まで垂れ、城を担いでいる人達が見えないようにしておく。そのカーテンは地面から2フィートあって、波や大きな海の泡が描かれている。波間にはいろいろな種類の魚が描かれている
。波と水の上には、ガレーや船が描かれており、その上には様々に武装した人達が一杯乗っており、すべての者達が武装をしており、海のなかの大きな岩の上にある愛の城や要塞を攻撃しようとしている。或る者は弓で、クロスボウで、槍で武装しており、他の者は要塞にはしごをかけて登ろうとしている。又これらに逆らって降りようとしている者がいて、激しく押す者や退却する者がいて、これらの者は弓や石で殺されている。
カーテンの内側では3-4人の子供達が楽器を非常に上手に演奏しており、一人はレベックをその他の者はリュートを、ソルタリー又はハープを演奏している。他の者達は歌を歌うのに適したよい声をしており、甘く気持ちの良い声で歌っている。その歌声は海のセイリーンではないかと思わせる程のものであった。
そして上で述べたクジャクは私、シカールに言わせれば、巧みな配慮の結果であるといえる。クジャクを用意し非常にきれいにして、水気を取る。金串を打ってローストする。ほとんどローストしたところでクジャクに質のよいホールクローヴをうまく適度に押し込んでおく。仮にその表面が傷んできたらもう一度ローストする。この仕掛けをご主人様にお教えしておくとそれからは彼の御希望通りにアレンジして差し上げることが出来る。
一見複雑そうなアントルメですがその実この中身はタイユヴァンがLe Viandierの中で述べたアントルメを集めて作ったのです。シカールはタイユヴァンほどのアイデアマンではありません。アレンジする能力に優れていたのです。しかし、気遣いは人並み以上で、そのことは文章からも溢れ出ています。
それでは上のアントルメをタイユヴァンのアントルメのレシピと見比べてゆきましょう。

この饗宴は第一回十字軍のGodfrey of Bouillon (ゴドフロワ・ド・ブイヨン)によるエルサレムの占領の様子をアントルメとして選び、シテ島にある王宮でシャルルⅣ世に敬意を表してひらかれたものです。
主催者はシャルルⅤ世です。シャルルⅣ世は、神聖ローマ皇帝カールⅣ世と呼んだ方がむしろわかり良いでしょう。彼はシャルルⅤ世のお母さんの兄にあたります。シャルルⅤ世の右にいる王冠を被った若者はヴェンツェルです。カールⅣ世の長男にあたります。
この饗宴はかなり大がかりで厳粛なものだったようです。おそらく1,000人を超えるお客様が出席したものと思われます。
カールⅣ世62歳、シャルルⅤ世40歳、タイユヴァン66歳、ヴェンツェル17歳の時の饗宴です。(このことを記憶していて下さい。後で少し触れますので。)
アントルメのところでご説明したタイユヴァンのいくつかのレシピをもう一度ご覧になって下さい。タイユヴァンの他の料理の説明に比べて遙かに丁寧な内容に気づかれることと思います。上でお示しした彩色画の中のひとつひとつを取り出して組み立て直したものがシカールのアントルメのように思われるのです。
左下の波は布を張った内側に人を配置して波のような動きを表現しているのです。それも既にタイユヴァンがアントルメの中で(白鳥のナイトの中で)はっきりと述べています。
2009/11/4 加筆
続く。
Du fait de cuisine by Maistre Chiquart
( Monseigneur Ayme, first duke of Savoy に捧げる)
神聖にしてイエスキリストの母であられる聖母マリア様のご加護が我が君主様にあられんことを。
最初に神にこの誉れ高い宴を催すお許しを請わねばなりません。
王、女王、公爵、女公、伯爵、女伯、王子、女王、公爵、女侯、男爵、女男爵、地方領主、そして多数の貴族方、これらの方々に対する格式ある料理とこの饗宴の名に恥じない品位ある宴にお出しする料理の数々を以下に述べることとする。
中略
よく肥えた牛100匹、羊120匹、そして又よく肥えた120匹の豚を饗宴の期間中に、そして宴の各日に子豚100匹これはローストするか他の料理に使う、そしてよく肥えた豚の塩漬けを60頭、これはラーディングに使うかスープにする。
屠畜者は知恵が働きよく頭の回る者であること。そうであれば、宴が予定よりも伸びても何が急に入り用なのか仮に余分にいる物は何であるのか(これに対応出来るようでなければならない)家畜が多いからと言ってむやみに処分してはならない。
宴の各日には羊200匹、仔山羊200匹、仔牛100匹、家禽2,000羽をそろえておかなければいけない。従って(あなたがかかえている)家禽商は機転が利く知恵のある者でなければいけない。家禽商はそのために、馬を40頭ほど抱えており、いろいろな場所から鹿、野ウサギ、アナウサギ、ヤマウズラ、キジ、(手にはいるだけの)小さな鳥,(手に入る)水鳥,ハト、鶴、サギ、全ての野生の鳥、これらをあらゆるところから、宴の2ヶ月~6週間前までに注意を喚起し、手にいれて、少なくとも宴の3-4日前に注文した肉が然るべき方法で処分された状態のものを手に入れておかねばならない。
宴の各日には卵を6,000個用意しておくこと。また宴にはスパイスを2荷。主な物として、ホワイトジンジャー、メカジンジャー、シナモン、グレインズオブパラダイス、コショウを用意しておくこと。
その他のスパイスとして、ナツメグ6ポンド、クローヴ6ポンド、メイス6ポンド、ガリンゲイル6ポンド、砂糖30袋、サフラン25ポンド、アーモンド2チャージ、米1チャージ、amydon30ポンド、レーズンの糖菓を12篭、イチジクの糖菓を12篭、プルーンの糖菓を8篭、デーツ100kg、松の実40ポンド、ターンソウル18ポンド、アルカネット18ポンド、金箔18ポンド、樟脳1ポンド、100エル(45インチ×100)の長さの薄布(ストレイナーとして使う)。これらの物は台所使用に限られた物でなくてはならない。
又、この宴を催す君主様にご満足していただけるように迅速に手が打てるように(用意しておかなければならない)宴に必要な前述のスパイスは各々別の皮袋の中に入れておくこと。
叱責やしくじりのない,よりよい準備のためにハウスステュワード、キッチンマスター、クックマスター達は宴の3-4ヶ月前に順番に集まって料理をするスペースが十分にあるか確認をする。
この作業スペースが十分に大きくよい状態であると大きなワーキングサイドボードが置け、キッチンマスターが料理を渡したり、皿を受け取ったりするところとサーヴィングサイドボードの間が(使いやすい様に配置出来るのです。)そしてそこには大きなよごれのない大きな肉を料理するのに必要な釜を。そしてポタージュやその他の料理に使う中くらいの釜をたくさん、そして魚やその他の必要な料理をするのに大きなハンギングパンを、たくさんの量のスープやその他の料理に使う普通のポットを、又かなり大きいモルタルを12個;ソースを作るスペースがあるかどうか確認して、又大きなフライパンを12,大きな貯蔵樽を12,小さな貯蔵樽を50、60のハンドル付きボール(cornues)、100本の木製スプーン、大小各25のslotted spoonsboth、フックを6つ、20の鉄製シャベル、回転する鉄製のスピットのついた肉焼き機を20,木製のスピットは腐って肉を駄目にすることがあるので絶対に信用してはいけない。120の鉄製スピットで丈夫な13フィートの長さの物。
他に3ダースの13フィートの長さのそれほど厚くなくて、鳥をローストし、小さな仔豚や川鳥をローストする(のに必要なスピット)を備えておくべきである。又、48の小さなスピットをendoring や焼串として使う。
又、酢を2樽;赤白ワインを1樽ずつ、各110ガロン(8sommes)のもの、よい樽に入ったヴェルジュを275ガロン(12sommes)、油を137 1/2ガロン(10sommes)。
そしてよく乾いた薪を荷馬車で1,000台分、大きな店舗一軒分の石炭、これらは十分でなくなった場合に補充出来る様確認をしておく。職人が怠けることがないように不足する物がなにもないようにキッチンマスタアーには有り余る程の手持ちの金を渡しておくこと。塩、ポット、野菜や他の必要なものが手にはいるようにしておくこと。私にはそういうことは起きてはいないけれども。
又、上手に手際よく提供し、素早くやってのけられるよう多数の金、銀、ピューター、木製のコップを4,000人分以上用意しておく。最初のコースで提供する場合、次のコースといくつかの数を用意しておく(そうすると)中間の時間で先のコースで使ったコップを洗ってきれいにすることが出来る。
又、このような宴で、ある非常に身分の高い高貴な方、由緒があり立派な領主とその淑女の方々で肉を召し上がらない方がおられる。そんな時には魚を、海や川の生又は塩漬けのものを、召し上がられる方法でお出しせねばならない。
又、海の魚の中ではsea-bream が一番である。リストアップすれば最初がsea-breamでconger-eel,grey mullet, hake, sole ,red mullet, dorade, plaice,turbot, sea-crayfish,crayfish,tuna ,sturgeon,salmon,herings,sardines,sea-urchin,mussels, eels, boops,ray,cuttke-fish,arany marine, anchovies,ells,、生と塩漬けの両方があげられる。
淡水魚について言えば、big trout,big ells, lampreys, filleted char, filletes of big pike ,filets of big carp, big perch,ferre’s,palle’s,graylings ,burbot, crayfish,そして他の魚である。
又、前にも述べた領主様とその奥方様の中には専属のマスタークックを伴っており、その者にある料理を準備させ、作らせるのです。その方々が素早く動けるようにマスタークックは要求に応じて十分にすぐに必要な品物を大量に提供出来るようにしておかねばならない。彼は好みに合う料理を御領主様とその奥方様にお出しせねばならないのだから。
又、最上のチーズを12,000kg、良質な白布を4,500インチ、サイトボード、魚、肉、ローストしたものをカバーするのに使うのです。そして、60×45インチのリネンの布でゼリーの色を出すのに使うのです。白の幅広い布でhyppocrasの色の様な12色の色を作るのです。
又、2個の大きな両手ナイフで牛を解体し、ドレッシング用にドレッシングナイフを1ダース、それにポタージュとスタッフィングを作るのに2ダースのナイフ、これは鳥と魚を細かく刻んだりして料理の準備をするときに使うのです。
更に、カッテイングボードとサイドボードを洗うのにタワシを6つ。生の肉と料理した肉をcasksに運ぶのに使用するバスケットを100個。サイドボードから運んで行ったり来たりするときに、石炭を運んだり、ローストを運んだり、その場に合わせて、また、カップを集めたり運んだりするに使うのです。
又、宴が仮に冬である場合には、台所に各夜60フィートとトーチを、20ポンドのワックスキャンドルを、60ポンドの獣脂ロウソクを屠殺場所、ペイストリーコックの場所、魚をさばく場所など、台所仕事をするところに必要である。
又、ペイストリを作る場所は大きくてしっかりとした作りで大きくて汚れのないオーブンを台所の近くに設置すべきである。肉と魚のペイストリにタルト、フラン、talmoses,ratons その他の料理に必要である。
又、最良の小麦をsommes(約412ガロン)用意しておくべきである。仮に宴が長引いても良いように気を付けるべきである。
又、三位一体であり、神聖なる神々の御慈悲により広く善なる行為を成し遂げる喜びに誓って、我々は宴を壮大にうまくきれいに成し遂げる準備をせねばならない。その為には、マスタークックとその料理人達はこの宴のために料理とアントルメを作らねばならない。上で述べた料理人とその使用人達が配置されていないことになれば、マスタークックは呼び出し人をその場所に送り、そこに人を配置しこの宴が崇高に行わなければならない。次ぎに、マスターとその職人がそろったら、マスタークックはそこにとどまり肉料理と魚料理を作る者を指示して各料理が計画したとおりに作られるよう、魚に付ける色は肉の色に似せて色つけするようによく指示せねばならない。
さて、最初に提供する大きな肉料理は、牛肉とマトンであり、牛肉はきれいで大きなRoyal piece にマトンを切り分ける者はくず肉を除いては何も残さずに切って、羊の長さに肉を切り分けなければならない。上で述べた牛肉とマトンの切り分けた肉片をサーヴするには大きな金の平皿にそのほかの物はのせずに(肉だけを)出すこと。
また、別の大きい平皿には(季節によっては)塩漬け肉をサーヴし、冬などは豚の背骨付の肉、andoiulle sausageと塩漬豚のチョップをのせる。
そしてこの最初のソースにはgreen porrayをサーヴして、マスタード以外のソースは必要ではない。これと一緒にシャポンの上にwhite bruetをかけて、いっしょに出す。肉にも同じものをかけてサーヴすべきである。
饗宴では料理とアントルメが重要な位置を占めていることが判ります。この宴でのアントルメのひとつを以下にお示ししておきましょう。上の文章からシカールが料理人として優秀だったことはよくお分かりいただけたと思うのですが、下のレシピからは彼の給仕長としての秀逸なる才能をご理解いただけるはずです。
10. entremet-castle
尊大なるアントルメ-城-この基礎となるものはかなり大きな担いかごでそのベースが作られている。4人で担える物で四隅には塔があり、各塔は要塞化し、跳ねだし座間がある。各塔にはこの要塞を守るクロスボウを構えた人と弓の射手を配置する。そして、各塔には明かりをともすろうそくと油のトーチが付いており、彼らはあらゆる種類の花と果物の枝を手に持ち、そしてその枝にはいろいろな鳥が付いている。各塔の足許には鎧をまとい炎を吐き出す熊の頭や、大きなカワカマスを“3つの方法で”料理したものを置いておく。-尾の部分はフライにして、中央の部分は煮て、頭はグリルでローストしたもの-これを別の塔の火を噴く獣の向かい側に置いておく。カワカマスはソースと一緒に食べるのでこれには注意を払うべきである。そのソースはオレンジをフライし、グリーンガーリックソースで煮たものである。このグリーンソースは酸っぱい味で、酢を少量入れて作る。ローストした(部分は)ギシギシで作ったグリーンヴェルジュといっしょに食べる。
別の塔の脚部にはendoredした炎を噴く仔豚を置き、その向かい側には皮を剥いて火を通し再び羽根を被せた白鳥を置く。これも口から火を噴く(ようにしておく)。
4つの塔の中央の脚部には愛の泉を作る。ローズウオーターときれいなワインが吹き出して流れのある泉を作る。この泉は鳩と全ての空を飛ぶ鳥たちといっしょになっている。そして、城の一番上には王旗やバナーを付け、泉のそばには皮を剥いて料理し、再び羽根を被せたクジャクを置いておく。
このクジャクの作り方は、私、Chiquartが既に述べたごとく、芸術とでも言うべきクジャク、それを作るマスターにこの方法をお教えしたく思います。これは領主様に対する尊厳と礼をもってお教えするのです。
大きな肥えたガチョウを用意しこれに串をうまく刺し、きれいにうまくローストする。クジャクの羽を着せてそのクジャクをセットするべき場所に置く。愛の泉の隣に羽根を広げた格好で尾を広げて、首は高く真っ直ぐに立てておく、あたかもそれが生きているように、首の中に木の棒を入れて首を真っ直ぐにしておく。そのためこれを料理する者はクジャクの皮を剥いではならない。金串をガチョウに刺し羽根をまとめて束ねる場所であるクジャクの臀部の皮を取ってガチョウの上にのせる。金串をガチョウに上手に打って、まるでクジャクが生きているようにその尾羽根を広げておく。
そして、下段の屋根の上にはニワトリの皮を取って料理した後、又羽根を被せたものとハリネズミをのせておく。それに肉で作ったリンゴや肉で作ったスペイン壺。型で作った作り物として、野ウサギ,brachets,シカ、ボア、ドルフィン、ザリガニ、ヤマウズラ、角のある猟師、型で抜いたエンドウ豆、肉を型に入れて作った空豆を置いておく。
その城のカーテンは周りを全て取り巻いて大きく地面まで垂れ、城を担いでいる人達が見えないようにしておく。そのカーテンは地面から2フィートあって、波や大きな海の泡が描かれている。波間にはいろいろな種類の魚が描かれている
。波と水の上には、ガレーや船が描かれており、その上には様々に武装した人達が一杯乗っており、すべての者達が武装をしており、海のなかの大きな岩の上にある愛の城や要塞を攻撃しようとしている。或る者は弓で、クロスボウで、槍で武装しており、他の者は要塞にはしごをかけて登ろうとしている。又これらに逆らって降りようとしている者がいて、激しく押す者や退却する者がいて、これらの者は弓や石で殺されている。
カーテンの内側では3-4人の子供達が楽器を非常に上手に演奏しており、一人はレベックをその他の者はリュートを、ソルタリー又はハープを演奏している。他の者達は歌を歌うのに適したよい声をしており、甘く気持ちの良い声で歌っている。その歌声は海のセイリーンではないかと思わせる程のものであった。
そして上で述べたクジャクは私、シカールに言わせれば、巧みな配慮の結果であるといえる。クジャクを用意し非常にきれいにして、水気を取る。金串を打ってローストする。ほとんどローストしたところでクジャクに質のよいホールクローヴをうまく適度に押し込んでおく。仮にその表面が傷んできたらもう一度ローストする。この仕掛けをご主人様にお教えしておくとそれからは彼の御希望通りにアレンジして差し上げることが出来る。
一見複雑そうなアントルメですがその実この中身はタイユヴァンがLe Viandierの中で述べたアントルメを集めて作ったのです。シカールはタイユヴァンほどのアイデアマンではありません。アレンジする能力に優れていたのです。しかし、気遣いは人並み以上で、そのことは文章からも溢れ出ています。
それでは上のアントルメをタイユヴァンのアントルメのレシピと見比べてゆきましょう。

この饗宴は第一回十字軍のGodfrey of Bouillon (ゴドフロワ・ド・ブイヨン)によるエルサレムの占領の様子をアントルメとして選び、シテ島にある王宮でシャルルⅣ世に敬意を表してひらかれたものです。
主催者はシャルルⅤ世です。シャルルⅣ世は、神聖ローマ皇帝カールⅣ世と呼んだ方がむしろわかり良いでしょう。彼はシャルルⅤ世のお母さんの兄にあたります。シャルルⅤ世の右にいる王冠を被った若者はヴェンツェルです。カールⅣ世の長男にあたります。
この饗宴はかなり大がかりで厳粛なものだったようです。おそらく1,000人を超えるお客様が出席したものと思われます。
カールⅣ世62歳、シャルルⅤ世40歳、タイユヴァン66歳、ヴェンツェル17歳の時の饗宴です。(このことを記憶していて下さい。後で少し触れますので。)
アントルメのところでご説明したタイユヴァンのいくつかのレシピをもう一度ご覧になって下さい。タイユヴァンの他の料理の説明に比べて遙かに丁寧な内容に気づかれることと思います。上でお示しした彩色画の中のひとつひとつを取り出して組み立て直したものがシカールのアントルメのように思われるのです。
左下の波は布を張った内側に人を配置して波のような動きを表現しているのです。それも既にタイユヴァンがアントルメの中で(白鳥のナイトの中で)はっきりと述べています。
2009/11/4 加筆
続く。
by dukelancelot | 2009-10-29 16:24 | 饗宴 | Trackback | Comments(0)
